26 novembre 2015

11月26日 『14歳の兵士ザザ』 『Zaza, soldat enfant de 14 ans』

Le jeudi 26 novembre 2015
6時半、曇り、24℃、65%。

テレビ東京から見えたEさんから漫画『14歳の兵士ザザ』をいただいた。本ブログの924日号で紹介した漫画である。大石賢一氏原作。石川森彦氏作画。赤十字国際委員会監修。

1時間ほどで読めた。感動しなかったといえば嘘になる。しかし、コンゴの実態とは相当違うなぁ、というのが印象だった。
思考が全く日本式だから、起こっているドラマは日本のドラマでしかない。主人公ザザ、少年兵はコンゴ人とは思えない考え方をするし、絵も顔が黒いだけで日本の少年そのものだ。第一、ザザというのはコンゴを含むフランス語圏では女の子の名前だ。アフリカ起源の名前には違いないが。
「ザザ」君
「ザカ」君とか「ゼレ」君とかにしておけば
男の子の名前になった
再読して気になったことを列挙していく。
(こういう指摘は「意地悪」にあたるのかなぁ。)

ザザと並んで主人公であるコミック・シナリオ・ライター神田がRDCコンゴに入国前に日本で予防注射をする。14本。いかにもアフリカは病気の宝庫。しかし、WHOが義務付けているのは黄熱病だけである。アフリカは怖い、「マラリアにエボラまである」というが、徒にアフリカを「暗黒大陸」化しているとしか思えない。しかも費用が20万以上かかってはアフリカにくるのにみんな躊躇してしまう。

アフリカといえばジャングル。神田はルワンダの首都キガリから「ジャングル」を通ってRDCコンゴのブカブ(作品ではアヴリと架空の都市にしている)に入るが、コンゴでも広大なジャングル(熱帯雨林)があるのは赤道州、オリエンタル州で南北キヴ州はサバンナ、しかも標高が富士山より高い山が連なるサバンナ地帯である。
キヴ湖からブカブ市を望む
キガリでジェノサイド記念館を神田が訪問する。この記念館は現カガメ政権によるツチ人だけが犠牲者となったというジェノサイドのシナリオでできた記念館で客観性がない。その記念館を漫画に登場させた理由はなんだろうか。無知または無関心。

都市ブカブ(南キヴ州の州都)も名前を変えられたが、キヴ湖もガラ湖という名になってしまった。ブカブはベルギーの友人でクリスチャンに学校でフランス語を教えているドミニクさんによれば、キヴ湖畔の瀟洒な町だ。そのまま名前を残して欲しかった。
ブカブには確かに国際赤十字のコンゴ事務所が存在する。

架空都市アヴリAveliを登場させたはいいが、その街にある銀行の看板が「Banque de Aveli」とある。「Banque d’Aveli」とならなければいけない。「Banque d’Algérie」のように。この作品は英仏等に国際赤十字によって翻訳されるらしいから注意した方がいいと思う。

武装集団が、この銀行の襲撃計画する場面がある。金塊があるというのだ。ありえない。スイスの銀行ではないのだ。金はコンゴのいたるところで採れるが金を銀行に預ける人はいない。

ザザの故郷の村アマンギが出てくる。アマンギというのも架空の名前。アヴリから遠くないようだが、村落である。先ず電気も水道もないはずだ。ルブンバシから僕のいるキプシの途中の村、ブカブより遥かに大都市のルブンバシから18㎞のミンブル村にさえ、電気も水道もない。携帯電話も通じない。ましてやオートクチュール店などありようもない。
村の女性はワンピースなど着ていない。パーニュpagneと呼ばれる腰巻が普通だ。男性はTシャツにジーンズになってしまったが、女性はたいていパーニュである。ミニではなく普通の丈のスカートをはいていることも珍しい。
髪型もコンゴ風ではない。大石氏が多数の写真を撮っているはずだが、何故参考にしなかったのか。男が坊主頭以外の髪形をしているのも考えづらい。コンゴでは歌手など芸能人
村の女性や子どもたち
を除いたら、大統領から会社員、学生、庭師まで例外なく坊主頭である。

重要な小道具に笛が出てくる。伝統的な楽器としていくつも穴の開いた笛はないと思う。現代の話だから母親が学校で習ったオカリナが吹けるかもしれない。しかし、学校で音楽の時間があるというのは極めて稀であろう。習ったとすれば教会になる。それでも昼食の集合の合図にメロディーのある曲を奏でるというのは出来すぎである。タムタム太鼓ならありえないことではないかもしれない。

国際赤十字信条紹介がある。公平、中立だ。これは赤十字の赤十字たるところ。その中立性を批判してできたNPOが「国境なき医師団」であることを忘れてはなるまい。特にRDCコンゴの正規軍は、村々で略奪、強姦、破壊をすることも多々あると知られているのだ。漫画の中ではまるで正義の味方だが。そうした正規軍、政府を国境なき医師団は批判する。赤十字は沈黙するのみ。監修が赤十字国際委員会だからまさか自己批判するわけにもいかないだろう。

他にも多々問題点がありそうだが、興味が湧いたのはアフリカ大陸人類起源説の中で俗説と思われるミトコンドリア・イヴÈve mitochondrialeが冒頭と最終に出てきている話である。人類の祖母としてのイヴだ。
アダムはいないのかとWikipediaを見たら、Y染色体アダムAdam Y-chromosomiqueというのがあった。イタリアの生物学者が男系祖先を142000前と推定した。いずれもアフリカに行き着いている。人類愛の強調として面白いと思った。


結論として、先入観ではなく、アフリカの現実に即したストーリー及び漫画を制作していただきたかった。

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