le samedi 1er février 2020
小林圭がミシュランの三ツ星を獲得して話題になっている。パリのレストランだ。レストランのサイトがフランス語、英語、日本語で書かれているが、日本語だけがちょっと違うのが気になった。特に食してみたいと思わない。僕にとって美食は、スイスはローザンヌ近くにあったジェラルディーヌでの経験が最高で、TroisgrosやBocuseよりも優れているとおもうから、それで打ち止めなのである。それにガストロノミーに興味がなくなっている。お金もないしね。
薬は何に寄らず嫌いなのだが、妹さつきに指摘された肺気腫emphysèmeかも知れぬという脅かしに、Salbutamolの吸入薬をクリスチャンに買ってきてもらった。よく映画などでみる喘息症状のひとが使うスプレーである。Ventolineというグラクソ社のフランス会社製。ま、時々使ってみるか。
『人間椅子』(江戸川乱歩)。江戸川乱歩といえば、小学校の時に読んだ『怪人二十面相』しか知らなかった。大人向けの小説があるとは聞いていたが、読む機会がなかった。
『人間椅子』を面白く読んだ。椅子の中に人が入っているという発想が面白い。オチも悪くない。江戸川乱歩って、不思議なおじさんだなぁ。
『Sisyphe』(シジフォス)の巻頭にギリシャの詩人Pindareピンダロスが引用されている。「O mon âme, n’aspire à la vie
immortelle, mais épuise le champ du possible.我が魂よ、不死を目指すな、出来そうなことを尽くせ」、余り有名な引用句ではなく、カミュの引用で有名になったようだ。
le
dimanche 2 février 2020
6時半、雨、24℃、77.5%。
江戸川乱歩『黒蜥蜴』。タイトルがカッコいい。主人公の女盗賊黒蜥蜴がカッコいい。だけど、内容はバナル(平凡)。作品が出たのが1934年というから、自由に書けなかった時代なのだろう。「美術館」の場面も迫力がない。トカゲはハエや蚊を食べてくれそうだから、気味の悪い動物ではない。アフリカには極彩色トカゲがいっぱいいる。僕は可愛いと思うようになった。
『Sisyphe』はPascal Piaにささげられている。Pascal Piaは1938年アルジェで非共産党系新聞『アルジェ・レプブリカン』を創刊する。この新聞にカミュが就職した。最初はパトロンと従業員との関係だった。二人の間で交わされた書簡集(1939-1947)が刊行されている。10年先輩になるピアとカミュの友情が生まれた。一緒にパリ解放後、有名な『Combatコンバ』紙を立ち上げたが、1947年、二人の友情関係は決定的に終焉する。政治的、哲学的立場の相違が出て来たところからの別離になったようだ。
le lundi 3 février 2020
6時、曇り、24℃、75%。
18時50分、停電。また始まった。
ブラウザーに僕の好きなChromeをつかっているが、アビジャン出張以来、ポップアップで広告がでるようになった。これを出なくさせるためには、Chromeの設定を元にもどさなくてはいけないらしい。手順に従ってréinitialiserをした。果たして頼みもしない広告がでなくなるだろうか。
le mardi 4
février 2020
6時、小雨、24℃、75%。
Chromeで余計な広告が出なくなった。
ふと思い出した。『L’Étranger』でムルソーが「太陽の所為」でアラブ人に4発も余計に弾丸をぶち込んだ海岸を、アルジェから東に行ったロッシュ・ノワール(黒岩海岸)だとばかり思っていた。今はブーメルデスと呼ばれる町である。実際の海岸はアルジェにずっと近いところにあるようだ。何故Roche Noireだと思ったのだろう。やや荒れたロシュ・ノワールの海岸には何回も行っている。そして、ムルソーの決定的場面はこの海岸に違いないと勝手に思い込でいたのだ。
le mercredi 5 février 2020
7時、小雨、24℃、72.5%。
Canal+で『20 minutes」というトルコ制作になるシリーズものの第2回をみた。普通に暮らしている家庭で、母親が警察に殺人容疑で逮捕され、裁判で有罪20年の懲役刑を言い渡される。勿論冤罪事件のドラマ。
僕はトルコに偏見を持っている。シナリオが弱いのか、証拠ともいえない証拠で、裁判もおざなりに進んで有罪判決になっている。映画『アラビアのロレンス』を見て以来、トルコは恐ろしい国だと思っている。
現在のトルコの体制は民主主義というには程遠い。当然ながらトルコ人でも良民がいるにちがいないから、偏見に基づく判断はいけない。しかし、拭い切れない偏見なのである。
59話もあるシリーズものだから、今後の展開は全く分からない。しかし、母親の裁判があまりにいい加減、弁護士もやる気がない。ドラマを追う気が失せる。
le jeudi 6 février 2020
6時半、曇り、24℃、70%。
電力会社Snelで先月分請求料金を支払った。50570フラン。
チコのトイレ用の砂がルブンバシのどのスーパーでも売り切れ。仕方がないので、庭師に川砂を買ってきてもらった。
le
vendredi février 2020
6時、小雨、24℃、70%。
チコちゃんに狂犬病の予防注射を獣医を呼んでしてもらった。これでチコをアビジャンに連れていける。$20。
一昨日、寝室のライトが切れた。電球ではなく、どこかでショートしたらしい。電気やのペリカンさんを呼んで修理してもらった。天井裏に登ったりと2時間も修理に要した。10ドル。
昨夜の雨で、隣家との壁の一部が崩れた。雨季なので直ぐに修理出来ない。する気もない。ほっておけ。ヤギがやニワトリが入ってくるが、知ったことか。
le samedi 8 février 2020
6時、曇り、24℃、72.5%。
『Green Book』Peter
Farrelly監督。2018年。黒人ピアニストDon Shirleyと彼のイタリア人運転手の物語。1962年とあって、黒人差別が激しい頃。
Green Bookとは黒人用のガイドブックで、黒人が泊まれるホテル、レストランが案内されていた。グリーンは緑ではなく、このガイドブックを作った人の名前。1964年まで発行されていた。
南アのアパルトヘイトも酷かったが、アメリカの人種差別も徹底していた。
余中からこの日は映画をみたのだが、後日(23日)全編を通してみることができた。本当にシナリオがいい。感動できるように、終わりまで飽きさせないように出来ている。
le dimanche 9 février 2020
6時半、うす曇り、24℃、72.5%。
『Le
Pianiste』(邦題『戦場のピアニスト』)。Canal+。ロマン・ポランスキー監督。2002年。実在したポーランドのピアニスト、シュピルマンの物語。シュピルマンは2000年に88歳で亡くなっている。ナチの犠牲者だったのに長寿を全うできた。運命。
長男のスピルマン氏は日本近代史専攻の歴史学者。へ~、面白い因縁だ。
le lundi 10 février 2020
6時、晴れ、25℃、70%。
伊藤真波さん、バイオリニスト。偉いねぇ。水泳の選手でもある。不屈というか、精神力だろう。世の中には偉い人がいっぱいいる。下らないのも多いけど。笹川氏のメイルで知った。
チコちゃんのトイレの砂がスーパーPsaroに入荷した。1袋だけ買った。
14時45分、雷雨。凄い勢いで雨が降っている。雷も近くで落ちた。電気が切れないで欲しい。
le mardi 11 février 2020
6時半、晴れ、24℃、70%。
隣家に店を開いているエスドラス君の床屋に行って短髪にした。
le mercredi 12 février 2020
6時、曇り、24℃、70%。
髪を軽く染めて、洗髪。
18時半、雷雨。
le jeudi
13 février 2020
6時半、雨、24℃、70%。
le
vendredi 14 février 2020
6時半、雨、24℃、72.5%。
雨が降り止まない。寒いし外に出られない。昨日は10時半過ぎに晴れ間があったのに今日はダメ。クリスチャンのスーツケースを買う予定がずれる。
13時50分、停電。しきりに雨が降っている。最低の気分。
18時15分、電気回復。Felix Auger-Aliassime君の試合後半から見ることができた。Bedene選手をタイブレークjeu décisifで下して勝利。準決勝demi-finalに進む。
le samedi 15 février 2020
6時、曇り、23℃、75%。
ジャンボ・マートでクリスチャン用のスーツケースを購入。布製。12万フラン(70ドル)。みてくれはいいが、プラスチックやメタルのスーツケースが110ドルもする。全て中国製。中国製だって、もっと丈夫そうなものがあるはずだがなぁ。コンゴでは、安物で品質の悪い中国製を「選んで」輸入している。
le dimanche 16 février 2020
6時半、曇り、24℃、75%。
2週間で切れるサテライトTVのボーナスがまだ続いている。おかしいねぇ。と思ったら14時からボーナスがなくなった。
le lundi 17 février 2020
7時、曇り、24℃、72.5%。
le mardi 18 février 2020
6時、晴れ、24℃、75%。
TV5Mondeで珍しくJean
Zieglerが出演していた。最初誰だか分からなかった。Zieglerの本『Une Suisse
au dessus de tout soupçon』を読んだのは、今から40年近く前のことだ。スイス人がスイスを徹底的に批判する書である。スイスにとって、言論の自由の見本のような本で、スイスの銀行システム、スイスが寄って立つ「銀行秘密」を攻撃していた。
Zieglerも今年86歳になる。老人だが、論調は昔と全然変わっていなかった。国連のレポーターになって、人権委員会に所属しているらしい。口角泡をとばして、EUの移民政策をなじっていた。ギリシャのレスボス島に難民キャンプがあることを知った。非人道的なキャンプで、欧州が難民をここでストップさせ、欧州各地に拡散させないようにしているのだという。Zieglerの見て来たレスボス島、その通りだと思う。しかしレスボス島だけでない。難民キャンプはケニアにもあるし、RDCコンゴ、タンザニア、リビア、イタリア、フランス、トルコ等々にもある。合法、非合法で国境を越えてきた難民が収容されている。
Zieglerは、じゃ、どうしたらいいというのか。それがわからない。
実をいうと、国連、国境なき医師団など大小の国際NGOは難民問題を解決できないでいるが、それで「飯を食っている」のである。難民キャンプに収容されているのは、多くは市井の人である。なけなしの財布をはたいて逃げてきた人たちで、金持ちは、とっくに先進国に逃げて、望郷の念はあるにせよ、優雅な生活を送っているのだ。戦争が始まる前に資産を海外に移し、どこかの国籍を「買って」、経済活動も継続している。
Zieglerにも提案する解決策はない。
本当は解決策はある。しかし、実現不可能である。即ち地球上に戦争がなくなり、貧困がなくなることだ。或いは、人類最後の核戦争をして、ヒトが絶滅すればよいのだ。ヒトが絶滅しても、何時か新たな生命が地球に生まれるだろう。その生命が進化をとげたとき、化石になった我々の歴史を知って、戦争のない、貧困のない世界を実現すればよい。ただ、僕はきっと新たなる生命も、それを実現できないだろうと思う。やっぱり戦争するのだ。
le mercredi 19 février 2020
7時、曇り、24℃、75%。
『Mauvaises
herbes』(Kheiron監督、フランス、2017年)。カトリーヌ・ドヌーヴが出演していた。題名は「雑草」だが、出演している少年たちのことを云っているのだ。ストーリーは思春期の元ストリートチルドレンの教育を引き受けたチンピラ詐欺師の話。大きな感動はない。それにしてもドヌーヴさん、としとりました。76歳かぁ。
le jeudi 20 février 2020
6時、快晴、24℃、72.5%。
久しぶりの快晴。水圧がなく、洗濯は難しい。屋内では断水。
le vendredi 21 février 2020
6時、曇り、24℃、70%。
朝6時起きたときには既にネット不通。8時半、回復。けれど、不安定。
『L’honneur
du dragon』(タイ、2005年)。単純な勧善懲悪の物語だが、ゾウが重要なアクターになっている。タイのゾウは完全に家畜化されていて絶滅の危機はないのだろうか。ネットをみるとやはり牙をもとめて密猟があるらしい。
僕はタイでゾウに乗ったことがある。傍から見るのと違って、ゾウさんには硬い毛が生えていて、ちくちくと痛いので直ぐに背中から下してもらった。ゾウさんとの接触はこのときだけだ。
le samedi 22 février 2020
6時半、快晴、25℃、70%。カタンガ晴れ。
le dimanche 23 février 2020
6時半、うす曇り、26℃、70%。
『Sisyphe』(続き)。本書は自殺論から入る。
「自殺は不条理風の解決である。」とカミュはいう。人生は生きる価値がないから自殺するわけで、生きているのは習慣だとも。「不条理風」という訳語は「不条理的」でもいい。「不条理」とは「理にかなわない」だけでなく、僕が繰り返すように「馬鹿らしい、阿保らしい」の意味である。
生きる理由は同時に死ぬ理由にもなる。ここで、生きるが死ぬかの思考には、La Palisseとドン・キホーテ的思考しかないだろうとカミュは推量する。自明の理と情熱、明白と感情、明確と叙情と言いかえられる。La Palisseは「パリスの真実」から来ている言葉らしい。その故実を初めて知ったがCamusには常識だったのだろう。あるいはインテリのフランス人にはそうなのだろう。
「生きることは、当然ながら易いことではない」。ま、易いこともあるんじゃないかと僕は思うがなぁ。
カミュは名誉ある自殺の例に中国革命の際の政治的自殺を例としてあげる。1905年に日本の東京で自殺した中国人革命家陳天華のことなのだろうか。これは勿論共産革命ではなく、辛亥革命、清王朝に対する革命だ。カミュがシジフォスを著わしたとき、まだ毛沢東の共産革命は成就していない。
Felix Auger-Alliassime(FAA)君、マルセイユ大会も決勝まで進んだが、今回はチチパス君にあっさり負けた。ATP決勝に残ったのが5回目だった。まだ大会優勝がない。ま、19歳だ。まだまだチャンスはあろうが、大選手はその年までに優勝経験を持っている。FAA君にカリスマ的大選手になるほどのタレントはないかもしれない。でも父親がトーゴ人、トーゴというのは大統領が世襲になった独裁国だ。そこに清涼な風をもたらす英雄FAAが出てきてほしい。
le lundi 24 février 2020
6時半、うす曇り、26℃、70%。
le mardi 25 février 2020
6時半、うす曇り、24℃、70%。
今日もいらいらさせられた。
アビジャン行きの航空券予約をネットでしたが、先ず、どうも怪しい代理店Tripmonsterなるところで予約をいれたら、カードで支払いのところでネットがダウン。恐ろしいタイミングであった。ネットで代理店の評判を調べたら、最悪。詐欺師だ、ドロボウだとある。上手くいっている例もあるが、騙された人のコメントもあった。ネットが回復してから数度支払いをトライしているので複数回支払ってしまった可能性があった。
口座のあるコンゴの銀行Rawbankに連絡、支払いがされないように連絡した。キプシRawbankの支店長、ルブンバシRawbankの知り合い、キンシャサRawbankのCall
Centerに連絡。ところが連絡途中でこんどは僕のスマホのプリペイドが切れてしまい、電話会社Airtelに急遽でかけて、通話ユニットを10ドル分購入。Rawbankの説明では、口座から引き落とされた形跡はないと。これでちょっと安心。Tripmonsterが支払い請求をしてくることもあるらしいので、絶対支払いに応じない二と念を押した。何しろ「モンスター」という名前がいけない。
再び航空券予約を開始。ドル表示にしたときと、ユーロ表示したときとでは、代理店がことなって表示された。ドルでは相変わらずTripmonsterが最安値だ。ユーロだとGotogateという代理店が表示される。しかもユーロの方が安い。Gotogateは去年使ったことのある代理店である。そこでGotogateで発券申し込みをすることにした。これは無事に成功。航空券の予約ができた。
Tripmonsterの支払いトライでは、東京にある口座をつかったカード決済も一度だけトライしている。東京のVisaカードはオリコ。そこでオリコの支払いもチェックしたが、今のところ異常はなさそうだ。
航空券の手続きが終わったので、今度は宿舎を決めねばならない。これもネット。Airbnbを利用する。適当なアパートを見つけて、予約を入れようとしたら、Airbnbが僕に身分証明書の写真を送れという。今までこんな請求がなかった。旅券に使った写真を送ったらダメだという。何がダメなのか分からない。写真は個人情報だ。Airbnbからは何故写真が必要になったかのか、長々ともっともらしい説明がきた。そんなもの信用できるか。クレームのメイルを何度か送って今日はおしまい。宿舎の予約が結局できなかった。
le mercredi 26 février 2020
6時半、晴れ、24℃、72.5%。
朝一番宿舎の予約をすべく、今度は旅券をスキャンした。スキャンの結果をPDFにしたのではAirbnbは受け取れない。JpegにしてAirbnbに送りつけた。それはいいが、本人の写真かどうか、PCオンラインで別に撮った写真と比較するのだという。ところが、その写真が旅券の写真と似ていない、ないしぼやけているとのことで、やり直しを迫られた。何度も取り直したが上手くいかない。参った。Airbinbの相談窓口でやりとり、スマホで取り直し。しかし、それも良い出来ではなかったらしい。Samusungスマホの写真の解像度が悪いのか、Huaweiスマホにかえて、かつフランスからAirbinb担当が夜21時に電話してきてなんとか身分証明の写真問題をクリア、やっと宿泊先予約が有効となった。やれやれ。
こうしたPC作業、PCに余程慣れていないと出来ないだろう。
le jeudi
27 février 2020
6時半、小雨、24℃、72.5%。
ここカタンガの雨季は、女心か男心、日本の秋の空である。
ころころと変わる。「あっ、晴天だ、洗濯しよう」と洗濯して衣類を庭に干すと、一転俄かに黒雲、雷まで鳴って豪雨。慌てて、洗濯物を家の中にとりこむ。暫くすると、かんかんと日が照りだす。また洗濯物を陽に干す。ここで昼寝なんどしたら、大雨が来る。
更にAirbinbの予約に問題があった。同行する息子クリスチャンの名前がAirbinbのドキュメントに明示されていなかった。明示させるためには、クリスチャンのメイルアドレスが必要になった。彼はメイルアドレスを持っていない。そこで、作成することにしたが、それがまた大変だった。ともかく、作成して彼の名前が明示されるようになった。
これでコートジボワールの入国ビザ申請ができる態勢が整った。
le vendredi 28 février 2020
6時、曇り、24℃、72.5%。
ジョコビッチとモンフィスの試合をTV観戦。ジョコビッチはバルカン戦争のときまだ子どもだった。精神力も体力も第2セットが山だった。ジョコは何回もマッチポイントをとられながら、粘り強いというか、動揺を見せず、モンフィスの疲労を待った。
le samedi 29 février 2020
6時、曇り、24℃、72.5%。
庭師クリスチャンに今月分を払い、来月は28日に引越しを告げた。次の店子は決まっていないので、失業になるわけだ。スーベニアをくれとのたまわった。
コートジボワール入国ビザが僕の分、クリスチャンの分ともOKになった。2月中に、航空券、宿舎手配、ビザともに完了できてよかった。
PCはマウスを使うとやっぱり便利だ。洋服タンスのなかにしまわれていたマウスを発見、つないでみると動いた。どうしてマウスを使わないようにしていたのかは忘れた。
来月28日(土)、ザンビアに出て、翌日Ndolaからコートジボワールのアビジャンに向かう。アビジャンでの新しい生活が始まる。
引越しといっても欧州とは違って国際道路のないコンゴとコートジボワールでは家財道具を送るわけにもいかない。ベッド、冷蔵庫、タンス等々をフランスシスコ女子修道会が買ってくれることになった。500ドル。
整理をしていてタンスの引き出しから、T君の手紙が出て来た。9枚にもなる手紙だ。手紙はフランスにいた僕に宛てたものだが、宛先不明でT君の手元に返ってきた。T君はその手紙をずっと持っていた。1972年の手紙。
T君は67歳の誕生日を迎えずにして他界した。手紙は彼の最愛の奥さんであるNさんから、T君の墓参りをした日に手渡された。T君27歳の時の手紙だ。40年を経て僕は青年Tに会ったわけである。Tは僕たちの青春時代を語っている。熱い友情を切々と懐かしんでいる。
青春時代、僕たちの出会いは高校2年生の時だった。メイルの時代ではなく、手紙の時代だった。僕は毎日のように手紙をTに宛てて書いた。手紙は僕の青春の証(あかし)であった。初めて書いた手紙に僕はマルタン・デュガールの『チボー家の人々』の友情溢れる章を引いた。僕の友情のモデルだったのだ。
27歳のT君の手紙に、僕たちが初めて一緒に二人だけで行った宮城県の唐桑と岩手県の三陸海岸の漁村に行った旅のことが書いてあった。僕が20歳、Tが19歳の時の旅だ。伊藤整の詩を数篇引用しながら、伊豆とは違う冷たく寂しい東北の海。詩は北海道の海を詠ったものだが、Tの中では僕たちの見た、身体を沈めた海の感覚だった。
僕はTに「大人とは堕落」だと云ったいう。堕落とは情感の喪失である。青春の情感は「純粋」に象徴される。「純粋」が無くなれば、即ち堕落なのだ。僕が会社を辞めてしまってフランスに出たことを、Tは一六、七際の僕に立ち返ったと受け取った。堕落の拒否と受け取った。Tも東京を離れて福島で新しい生活を始めようとしていた。大都会の会社勤務ではなく、地方の現場勤務を希望した。福島の原発工事だった。
「純粋」に大きな価値を認めるのは、ごく日本的な価値観と今思う。僕が見出した「純粋」とは、ドスケベなT君のことだった。嘘偽りなくドスケベさを晒したTを「純粋」と表現したのだ。La puretéの本来的意味とは違ったろう。だが、当時の僕はそんなあからさまなTを「純粋」と云ったのである。
T君はその後も精一杯に生きた。40歳の時、司法書士の勉強をして国家試験に合格し、転職した。会社を経営し、成功して自社ビルを建てた。どうもしたたかな経営者だったようだ。会社を経営していた時のTを僕は知らない。「君には出来ないだろうな」と晩年になって僕に語ったことだけを覚えている。僕は確かに金儲けができない。デラシネdéracinéでバガボンvagabondである。
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